演奏法の進化 その2『奏法』

演奏法の進化 by エメット・チャップマン

奏法

その頃、私はジミ・ヘンドリックス独特の新しい旋律的な表現の虜になっていました。 ヘンドリックスやジョン・コルトレインと同じように自由なメロディ・ラインを弾き、また ジャズ・ピアノのビル・エバンズやマッコイ・タィナーのように同時に和音を出し、 オーケストラのごとく演奏しようとしたが、ギターで両方のテクニックを同時に使うのは 簡単ではありません。しかし、1つを採用し1つをあきらめるようなことはしたくありませんでした。

片手のみで運指すると二者択一を迫られる状況でした。望んでいた表現は完全に 出来ませんでした。しかし、右手で弦を押え、アンプの音量を上げるとすぐに、早くて 滑らかなリード・ラインを弾く事ができました。左手は普通のポジションでいつもの コードやベース・ラインを弾き、右手のハーモニーやリズムを付け加えることができました。 また、右手のフィンガリングが左手と全く同じく、両手の人差指が小指より チューニング・ペッグに近いです。(手のポジションはトニー・レビンの写真を参照) 瞬間的にギターの片手フィンガリング・テクニックのメロディック対ハモーニック制限を 解決しました。これにより、私のミュージシャンとしての性格が完全に変えられ、 10年間研究し続けてきた事とは違う新たな出発点に立っていました。

図1
図1 1940年代に使われた
両手タッピング・テクニック

当時、ギターの両手の運指法は聞いた事がありませんでした。後に、40年代の後半に2、3人の ギタリストが両手の運指法を使っていたと聞きました。しかし、彼らは右の腕、手、指を弦に対して平行に 置き、演奏しました。(図1を参考)その一人、ジミー・ウェブスターがこの奏法を「タッチ・システム」と言い、 その教則本を書き、「タッチ・システム」をフィーチャーするアルバムを製作しました。

しかし、このポジションで右手のテクニックが非常に限られています。1、2本の指を使い、 ノートをひとつひとつ叩いていました。指がフレットに対して平行になっていないため、腕を左右に動かす 必要があります。この奏法はギタリストや音楽教師にほとんど知られることはなく、伝授されませんでした。

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Stickを演奏するトニーレビン
(撮影:アルマンド・ガロ)

両手のタッピング奏法を始めた1969年以来、右手は左手の反対方向から弦を押えていました。 右腕、手が弦に対して垂直、指それぞれが隣のフレット・スペースに入ります。両手の全ての指がフレット に対して平行になります。従って、腕を動かさずに、一本の弦で2、3、4ノートでも弾けます。指を弦に対して 平行に置くと一本の弦で半音階を弾く場合、腕を片で動かす必要があります。例えば、エディー・ヴァンヘイレンが この弾き方を優雅に使い、非常に感動的に演奏できるが、逆に通常なスケールやメロディ・ラインを 弾くのは難しいです。私の完全な両手奏法では弦楽器で「ピアノらしい」テクニックを使えます。

奏法を発見した後、それに合うように楽器を調整する必要がありました。発見した瞬間にギターを より垂直に持ち直しました。通常の横のギター・ポジションだと、右手が指板の上方、左手が下方から、 弦に置かれるため、両方の手首がねじ曲がり、右肩が弓なりに曲がります。指板をどんな角度にしても 奏法は同じだが、この新しい縦にする状態では無理がなく、快適でした。

この変更を自然に感じ、楽器のデザインを簡素化しました。少しずつレバーや、滑動カポ、かわった 形状のピックなどの新奇な装置をやめ、一定のインタバルでチューニングしました(当時、弦は9本)。