演奏法の進化 その3『Stick の制作』

演奏法の進化 by エメット・チャップマン

Stickの制作

図2 1970年Stickプロトタイプ1号を弾くエメット
図2 1970年Stick
プロトタイプ1号を
弾くエメット

自分で作ったソリッド・ボディ・エレキギターのセットアップは数日が掛かり、低いアクションや 通常より緩めな弦、正確に仕上げたフレット、弦の近くに設定したピックアップ、弦の振動を止めるダンパー等 を取付けました。最初の1年はこのギターを使いました。

1970年に黒檀の板で現在のStickのプロトタイプを作り、「The Electric Stick」と名づけました。 次の2年に渡ってベース弦を増やして、弦をメロディ、ベースのグループに分けて、ピックアップをステレオ にして、よりたてて持つようにベルト・フック、ストラップを作りました。最終的にはピアノと同じような音域、 4度のメロディとその逆方向の5度ベースのダブル・チューニング・コンセプト楽器ができました。

この様に2つの弦グループを1つの指板に張り付けると、基礎の演奏法のもう1つのジレンマを 解決できました。Stickではダブル・ネック楽器に似て、右手、左手がそれぞれ別の弦グループで完全に 独立した動きで演奏ができます。しかし、Stickはシングル・ネックなので、すべての弦で複雑に からみ合ったパターンも弾けます。

図3 1971年Stick プロトタイプ2号を弾くエメット
図3 1971年Stick
プロトタイプ2号を
弾くエメット

1970年から1974年まで5つのプロトタイプを作りました。それぞれが以前のモデルと比べて進歩があり、 少しずつ現在のデザインに近付きました。(図2、3をご覧下さい。)チューニング・ペッグやフレット、全体の形状 などプロトタイプの進歩につれて改良しました。1973年に弦を9本から10本に増やしました。1974年に初めて 6つの生産モデルを手づくりしました。

自分の希望に合うように楽器を改良しながら、西海岸でギタリスト、バーニー・ケッセルとボーカル、 ティム・バックリーとライブを行いました。1974年にStickの生産を始め、両手演奏法を教え始めました。 当時以来、ライブを行い、CDを作り、演奏法を教え、Stickを生産し、スティック・エンタプライズを経営 してきました。多くの芸術家はビジネス面が気に入らないらしいが、私にとってはどちらも表裏一体のもので、 相互に作用しあって総合的な深みを生むものなのです。